
防水工事で起こりやすいトラブルとは
防水工事は建物を水から守るための大切な工事ですが、残念ながら「工事をしたのに雨漏りが止まらない」「工事前よりひどくなった気がする」といった声も少なくありません。防水は完成後に内部の状態が見えないため、トラブルが起きても原因が分かりにくく、業者との話し合いが長引いてしまうこともあります。大切なのは、よくあるトラブルのパターンを知り、事前に防ぐ意識を持つことです。そのうえで、万が一トラブルになったときの対処法も理解しておけば、慌てずに対応できます。
完了後に雨漏りが再発するケース
もっとも多いトラブルが、工事後しばらくしてからの雨漏り再発です。原因としては、下地の傷みをきちんと補修していなかった、施工範囲を限定しすぎて別のルートから水が回っている、立ち上がり部分や排水口周りの処理が甘かった、といったことが挙げられます。見た目はきれいでも、細部の処理が不十分だと、数ヶ月から数年で不具合が出てしまうことがあります。
工期遅延や説明不足によるトラブル
もう一つ多いのが、スケジュールや説明を巡るトラブルです。「何日で終わると言われたのに長引いた」「騒音や臭いの説明がなく近隣から苦情が来た」「足場の撤去が遅れて生活に支障が出た」といった不満は、防水工事の内容そのものが悪いわけではなく、コミュニケーション不足から生まれることがほとんどです。工事前の打ち合わせで、工期や作業時間、注意点をどこまで共有できるかが重要になります。
トラブルが起きる原因と見抜き方
防水工事のトラブルには必ず理由があります。「たまたま運が悪かった」で片づけてしまうと、次の工事でも同じ失敗を繰り返すかもしれません。原因を知っておけば、見積もり依頼の段階で危険なサインに気づくことができ、結果として安心できる業者選びにつながります。
業者選びのミスマッチ
価格だけで業者を選んだ場合や、防水専門ではない業者に依頼した場合、工法選定や細かな納まりの判断が甘くなることがあります。また、戸建て中心の会社とマンションやビル中心の会社では得意分野が違うため、自分の建物と実績が合っているかどうかも大切なポイントです。担当者の説明があいまいだったり、質問への返答が遅かったりする場合も注意が必要です。
現地調査や下地処理の不足
防水工事は、どんな材料を使うかと同じくらい、下地の状態が重要です。現地調査でひび割れや勾配、既存防水の状態をしっかり確認できていないと、そもそも最適な工法を選べません。また、工事当日に高圧洗浄やケレン、ひび割れ補修などの下地処理を省略すると、一時的にはきれいに見えても、密着不良や膨れの原因になります。調査時に写真を見せながら説明してくれるかどうかは、一つの判断材料になります。
契約内容・保証の曖昧さ
「ここまでは工事範囲に含まれているが、ここから先は別料金」といった線引きが曖昧なまま契約してしまうと、追加請求を巡るトラブルになりやすくなります。また、保証についても「何年間どこまで対応してくれるのか」「万一雨漏りした場合の調査費用はどうなるのか」といった点を事前に確認しておかないと、いざというときに話がかみ合わなくなります。口頭だけでなく、書面に残っているかどうかも重要です。
防水工事のトラブルを防ぐためのチェックポイント
トラブルを完全になくすことは難しいかもしれませんが、事前のチェック次第でリスクを大きく減らすことはできます。ここでは、見積もりから完了までの流れの中で、施主側が意識しておきたいポイントを整理してみましょう。
見積書・契約書で確認したい項目
まずは、見積書の内容を細かく確認します。工事範囲、使用する防水材の種類とメーカー名、層の厚みや仕様、下地処理の内容、足場や廃材処分の有無などが明記されているかをチェックしましょう。金額だけが大ざっぱに書かれている見積書は、後々の食い違いのもとになります。契約書には、工期、支払い条件、天候不良時の対応、保証期間と範囲などが盛り込まれているかどうかも確認が必要です。
施工中のコミュニケーションのコツ
工事が始まってからも、担当者とこまめに連絡を取ることでトラブルを減らせます。毎日の作業内容や翌日の予定を簡単に共有してもらうだけでも、「今日は何をしているのか」「いつ頃から臭いが強くなる作業か」といった不安を減らせます。気になる点があればその場で質問し、写真を撮っておくと、万一のときの記録にもなります。近隣への挨拶や注意喚起をどうするかも、事前に相談しておくと安心です。
引き渡し時とアフターサービスの確認
工事が完了したら、引き渡し前の最終確認が大切です。実際に屋上やベランダに上がって、仕上がりの状態や排水口周り、立ち上がり部分などを一緒にチェックしてもらいましょう。その際、施工前後の写真を比較しながら説明してもらえると、工事内容への理解も深まります。また、保証書の有無や、定期点検のタイミング、連絡先などもこの段階で確認しておくと、後々困りません。
もし防水工事でトラブルになったら
どれだけ気をつけていても、工事後に雨漏りや膨れなどの不具合が出てしまうことはあります。大切なのは、感情的になりすぎず、冷静に状況を整理しながら対応していくことです。正しい手順を踏めば、話し合いで解決できるケースも多くあります。
まずは写真と記録を残す
異変に気づいたら、まずは状況の写真や動画を残しましょう。雨が降っているときの水の入り方、天井や壁のシミの範囲、床の膨れやひび割れの位置などを、できるだけ分かりやすく撮影します。あわせて、いつ頃から症状が出たのか、どのような天候のときに再発するのかなどもメモしておくと、原因究明の手がかりになります。
業者との話し合いと第三者機関の活用
記録を揃えたうえで、まずは施工した業者に連絡し、現地確認と対応策の提案を求めます。このとき、感情的に責めるのではなく、「いつからこういう症状が出ている」「保証の範囲でどこまで対応してもらえるか知りたい」といった伝え方を意識すると、話し合いがスムーズです。もし納得できる説明や対応が得られない場合は、住宅相談窓口や建築士など第三者に相談し、アドバイスをもらう方法もあります。
